●SS PART1

 朝。

 
 ジリリリリリリリリ
 
 わざと早めに鳴らした目覚ましを止めると、再び寝転び布団を被った。
 しかし、カーテン越しに降り注ぐ光が眩しくなり。
 多岐川はぼんやりと目をこすりながら、カーテンを開け窓を全開にして大きく伸びをした。
 今日も、太陽の塔がこの国に朝を運んできた。
 
 多岐川家のある朝
 
 多岐川はあくびをかみ殺しながら洗面台に向かって顔を洗うと、今日の朝ごはんの支度をする事にした。
 予め夜洗っておいた米を鍋に移し変えてから規定分量の水も加え、火をかけた。その隣のコンロで予め夜のうちに水を張っておいた鍋に出汁パックを放り込み、火をかける。ただいま同居人は軍事訓練の為に留守だからちょっと手抜きだ。多岐川自身は今日は休暇だから問題はない。
 鍋が沸く前に冷蔵庫から豆腐と塩漬けのわかめを取り出し、豆腐を適当に切り分けわかめも洗って塩抜きしてから同様に切り揃える。
 お弁当用に昨日作ったきのこの入ったそぼろもある。多めに作った卵焼きもある。買い置きの塩昆布ときゅうりの漬物も蓋付きの器に移し替え。
 豆腐とわかめも入れた鍋を煮立つ直前で火を止め、鍋のだし汁を一旦小鉢におたま数杯分移してからそこに味噌を溶き入れ、味を調えてから。
 
 用意したそれらをちゃぶ台に並べ、ようやく1人の朝食が始まった。テレビのニュース番組をBGMに、多岐川はぱくぱく口を動かしながら。
 
 ショウ君、夜には帰って来るけど今晩ご飯どうしようかなぁ。
 それで頭がいっぱいだった。
 
<SS PART2に続く>


 ●購入経緯


 多岐川佑華が家を買おうと思ったのは相方の小カトーがきっかけであった。
 とあるミスで小カトーと生き別れてしまい、慌てて謝罪と説明の手紙を送ったのはいいが、小カトーは手紙を呼んでいなかった。

「あー。あれ? いや、字がおおかったから。今度よもうって」

 ……小カトーは活字嫌いであった。
 それから、佑華の苦悩は始まった。
 相談しようと思ってビデオレターを送ったが見ていなかった。謝罪したいから伝言を残したが返事をくれなかった。挙句の果てに人に言付けを頼もうとしたら、肝心の頼める相手が国にいなかった。
 小カトーに連絡つけたい時、つける方法ないじゃん。
 困り果てた末に「家買って電話置こう。多分これで連絡がつくはず。……多分」
 そう言う結論に達した。

 たまたま参加した年末パーティーで抽選で3名様に家が当たると言う抽選会があった。
 まあ当たらないだろうなあと思い、とりあえず参加するだけ参加した所、何をどう間違ったのか抽選に当選してしまった。

「えー」

 とりあえず、晴れて家が手に入る事となったので、いそいそと家をSHCのカタログから選び始めた。


 元々小カトーの住んでいた家は、築約200年(端数を入れればもっと古い)と言う破格のぼろ家であり、古いとか大きいとかはあまり気にならないだろうなあと言うのが一つ、佑華が「ショウ君の戦闘機置けて電話があればどんな家でもいいなあ」と言うのが一つ。選んだ家は安アパートの2階にある小さな小さな家であった。

多岐川家の間取り

多岐川家内面図


  家は1Kと言う破格の狭さであった。まあ、30m2と言う狭さを考えれば台所がそこそこ広いのは上等であった。

 

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