「いや、アイドレス終わるまでに結婚できるなんて思ってなかった」
「アンタ小カトーさん何だと思ってんですか」

 結婚式を挙げる前の依頼者と執筆者の会話


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 多岐川佑華はカトー・多岐川と結婚する事になった。それが正式に決まった時、多岐川は涙を流した。
 無理だと思ってた無理だと思ってた、ホントにアイドレス終わるまで無理だと思ってた、てか結婚してもらえるほど好かれてる自信なんてなかった。戦闘機よりも立ち位置低いと思ってた。

「いや、そもそも好きじゃない相手に微笑青空なんてあげないでしょう」
 腐れ縁からツッコミが入るが多岐川は乾いた笑いを浮かべたまま言った。
「いや、ショウ君優しいから同情してくれたんじゃないかなぁ、て………」

 何でだよ、同情だけでお付き合い。ましてや同棲生活なんて無理があるだろ。芹沢は再びツッコミを加えたくなったが、やめておいた。彼女の相方・多岐川は幾分打たれ弱い子であり、放っておいたら物事をどんどんネガティブな方向に考えてしまう悪癖の持ち主だ。余計な事を言ってネガティブスパイラルに落ち込まれたらたまらない。

「えーっと、まあ。おめでとうございます」

 とりあえず、芹沢はそれだけ言ってお茶を濁す事にした。

 小カトーさん、苦労しないといいけど。とも口にはあえて出さないで。


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 所変わって鳴山荘。

「ほれ」
「はいー?」

 ご近所さんに「結婚する事になりましたー」の報告に行った際。ご近所のおばちゃんから封筒を手渡された。ちょっとばかり、重い。

「みんなからの祝いだよ」
「え? でも、これ結構ありますよね……」
 失礼だからと中の確認はしていないが。ちょっとばかりずっしりとした重みに。元から貧乏性の女はビビる。

「いいから貰っときな。結婚するとなったら何かと入り用だからね。これでドレス買うなりレンタルするなりするといいよ」
「あー、そうですねー。じゃあショウ君のも」
「旦那のはウチの旦那の着せてあげるよ」
「えー、でも」
「結婚式は花嫁が主役なんだから、ちゃんとしたの着ないとかっこ悪いだろ?」

 そうかなー、と多岐川は渋るが。ここで鶴の一声が。

「いいじゃん、こういうのって着るの1回きりなんだし」

 カトーの声に。

「うん、折角だからお店のドレス全部着せてもらおうかな」

 多岐川はアッサリ納得して顔をほころばせるのに。カトーもおばちゃんも顔を見合わせ苦笑した。
 ちなみに、その後行った貸し衣装屋さんで着たマーメイドスカートタイプのドレスを着て撃沈するのは全くの余談である。


(SS:芹沢琴@FEG)
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